東京高等裁判所 平成11年(ネ)3559号 判決
主文
本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
事実及び理由
第一 控訴の趣旨
一 原判決を取り消す。
二 被控訴人の請求を棄却する。
三 訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。
第二 事案の概要
本件事案の概要は、次に訂正、付加するほか、原判決の「第二 事案の概要」記載のとおりであるから、これを引用する。
1 原判決七頁二行目の「死亡」の前に「これを検案した浜松医科大学法医学教室医師石井晃によって太郎の」を加える。
2 原判決一一頁五行目の次に改行して「また、本件事故発生前における太郎の経済状況は必ずしも良好とはいえないものの、逼迫した状況にはなかったので、経済的問題が自殺の動機となった事情にはなく、また、本件事故現場をみると、自殺には不向きの場所であり、かえって、太郎の死亡は同所のカーブを自車で通過する際に、同カーブを曲がりきれなかったことによる転落事故に起因するものであると考えるのが相当である。」を加える。
3 原判決一一頁末行冒頭の「本件」の前に「太郎が本件②契約の締結された平成三年一一月二一日から一年以内の平成四年五月ころに死亡していることや、太郎には経済的行き詰まり及び健康状態の悪化等の自殺の動機があること、死亡現場及び死亡状況等に照らすと、」を加える。
4 原判決一六頁末行から一七頁二行目の「照らして、同人」までを「そして、前記主張のとおり、太郎」と改め、同六行目から一〇行目までを「前記主張のとおり、太郎の死亡事故は同人による自殺行為によって引き起こされたものではない。」と改める。
第三 裁判所の判断
一 当裁判所も、被控訴人の本件請求は理由があり認容すべきものと判断するが、その理由は、次に訂正、付加するほか、原判決の「第三 当裁判所の判断」記載のとおりであるから、これを引用する。
1 原判決一八頁八行目の次に改行して「1 太郎の死亡原因」を加え、同九行目から二一頁五行目までを削り、二二頁一行目の「そうすると」から同四行目までを削る。
2 原判決二二頁末行の「証人」の前に「六二、六三、七一、七二、八四」を加え、二三頁一行目の「原告」の次に「本人」を加え、二六頁一〇行目の「当時の」の前に「本件車両の発見された」を加え、二七頁九行目の「だらだらとした」を削り、三四頁二行目の「肝機能」の前に「高血圧と」を加える。
3 原判決三四頁一〇行目の「可能性も」の次に「まったく」を加え、三六頁三行目から四行目にかけての「まったく否定することはでき」を「少なく」と改め、同五行目から六行目にかけての「傾斜がさほどきつくはないうえ」を「また、相当な傾斜はみられるものの」と改め、同九行目の「直ちに」の前に「全損した運転席の窓ガラス等から車外に投げ出されて死亡した可能性とともに、転落によって」を加え、同末行の「ものと推認できる」を「可能性も少なくない」と改める。
4 原判決三七頁六行目末尾の「街金」を「高利貸し等の街金融」と改め、同九行目の「まったく無資産」を「財産的基盤が失われていた」と改め、三八頁六行目の「希」を「まれ」と改め、三九頁一行目の「自殺」から同九行目までを「自殺に結びつくものと認めることはできず、本件事故は太郎の運転ミスにより発生したものであると推認するのが相当である。そうすると、その余の点について判断するまでもなく、被控訴人において本件各契約に基づき災害死亡保険金の支払請求債権を取得したというべきである。」と改め、四一頁三行目の「結果的には」を削る。
5 原判決四二頁三行目の「11」の次に「(一)及び(三)」を加え、四四頁一〇行目から四五頁四行目までを「時効制度一般の存在理由は、①永続する事実状態を尊重することによる法律関係の安定、②時間の経過による立証上の困難の回避、③権利の上に眠る者は保護に値しないということにあるとされるが、本件のような生命保険相互会社との間で締結された保険契約をめぐる権利又は法律関係に対しては、各種データの管理を含めて保険会社には業務に関する専門性が認められること、他方、保険会社は大量かつ多様な保険契約に関する事務を日常的かつ恒常的に処理する必要から、右データも時間的経過とともに更新され、あるいは廃棄されるものであること、生命保険請求権に関して約款で時効期間が延長されている前記事情などに照らすと、右に掲げた②及び③こそが右短期消滅時効の主たる存在理由というべきであり、併せて同請求権の性質やその権利行使に要する契約的拘束の内容等を考慮して、本件における保険金請求者と保険会社の公平を図るべく右短期消滅時効に関する起算点も検討する必要がある。」と改める。
6 原判決四五頁五行目冒頭の「原告」の前に「被控訴人が本件各契約に基づき、太郎の死亡を支払事由とする保険金を請求するためには、控訴人に対して右支払事由の発生(実体的要件)を通知するだけでは足りず、太郎の死亡を証する必要書類の提出が必要(手続的要件)とされていること(終身約款四条一項、二項、同別表1(1)の1参照)から、」を加え、同九行目の「被告が保険金の支払をするとは到底考えられない」を「右事情に鑑みれば、被控訴人が本件各契約に基づく保険金の支払をする(終身約款二条一項参照)ような要件が満たされるとは認められない」と改める。
7 原判決四六頁一行目の「他に」を「本件各契約に基づいて、太郎の死亡を支払事由とする保険金を請求することができるという前提が欠けており、権利の上に眠っていると評価すべき事情がまったく認められず、」と改め、同三行目の「被告自身」の前に「また、時間の経過による立証上の困難の回避という前記短期消滅時効制度の存在理由にしても、本件では、太郎の遺体が発見されるまでの間に、控訴人においても太郎が生存することを前提として取り扱っており、少なくとも本件各契約が解約された平成五年一二月あるいは平成七年一一月までは、太郎の妻から支払い続けられた各保険料を異議なく受領し、右各契約のデータを管理していたものと推認することができることに照らすと、被控訴人の請求を排斥すべき決定的な理由とすることはできない。ちなみに、」を加え、同七行目の「権利者」から一〇行目までを「少なくとも本件においては、短期消滅時効に関する起算点である「保険金の支払事由が生じたとき」とは、単にその権利の行使につき法律上の障害がないというだけでなく、本件各契約に基づく請求権という権利の性質上、その権利行使が現実に期待できるものであることをも必要と解するのが相当であり、これによれば、本件における短期消滅時効の起算点は太郎の死亡が客観的に明らかとなった平成八年一月七日ということになるから、被控訴人の本件保険請求権は未だ時効消滅していないというべきである。」と改める。
8 原判決四八頁二行目及び六行目の各「敏雄」をそれぞれ「敏男」と改め、五三頁一〇行目の「自分は」を「被控訴人は、自分が」と改め、五四頁二行目冒頭の「という原告の供述は」を「と供述するところ」と改め、同四行目の「なんら不自然」の前に「右供述は」を加え、同六行目の次に改行して「なお、被控訴人と控訴人の本件紛争をめぐる前記認定の交渉経緯等に照らせば、被控訴人による本件保険金請求については信義則に違反することを窺わせるに足りる事情も存しない。」を加える。
二 そうすると、被控訴人の本件請求を認容した原判決は相当であり、本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 奥山興悦 裁判官 杉山正己 裁判官 沼田寛)